愛は惜しみなく与う④
どうやらポケットの中なのか、ガサガサと音が鳴り、声は聞き取れない

けど杏は、何かあった時、電話を繋ぐようにしている

なにか少しでもヒントを、と
杏はそういう子だから


そして聞こえてくる会話から、大体読めた

加古が杏のところにいると


一気に片付けて先に戻る


黒蛇と凰牙と聞いた時に、佐野のデータを餌に、俺を潰すことが目的だと思った。
でも、違った。杏を使って俺を潰すのが目的だった


凰牙の加古は3年前解散してから一切名前は聞かなくなっていた

だから勝手に終わったものだと思っていた


なんであの時、慧か自分が杏のそばに残らなかったんだろう。
いや、そうしてたら、きっと…黒蛇と凰牙の連中に勝ててなかった

でも…
杏が


『すぐ来てな。あたしは大丈夫』


電話からそう聞こえた。
杏の声は少し遠い

いくなと大きな声で言ったが、返事はなかった


くそ

場所は遠くないのに、とても遠く感じる。
そして佐野をみつけたそこに、杏はいなかった

佐野を責めることもできない。


俺の完全な読み違いが原因だ
< 346 / 443 >

この作品をシェア

pagetop