イルカ、恋うた
この男は黙秘を続けている。


検事正襲撃事件に関与していないなら、否定するだろう。


それすら、拒む。


俺の背筋に汗が流れた。


なぜか知らないが、やけに不安が漂う。


「ま、本庁になら吐くだろうよ。さ、仕事、仕事」


課長は、俺の背を叩く。


それでも、冷や汗は引かなかった。


鑑識の結果を受け、彼は特捜班に引き渡された。


十三年前の捏造を、検事正が口を割り、ライターが証拠を受け取っていることを、知らない。


彼らは焦っているようだ。


解決しなければ、御崎に関わる者が、真実を知る可能性を否定できない。


素人にも、本庁の特別捜査一課というのが、どれだけのものなのか理解できるのだろう。



本庁に引き渡しの際に、人形のように無表情だった顔が、曇った。


「拷問に合わなきゃいいけど」と、岩居さんが嫌味っぽく漏らした。


焦りを露にしている彼らなら、否定できないだろう。


前方から撃った弾が後部座席側に貫通。

歩道側から撃たれた弾が、佐伯検事正に重傷を負わせた。

前方に立って撃ち、まずパンクさせる。

停車したら、歩道側に走って、検事正を狙った。


< 197 / 224 >

この作品をシェア

pagetop