イルカ、恋うた
『次、再会したら一つに戻すの。恋人同士が帰るのよ。きっと、その時は……』


と、少女は頬を染めて、口をつぐんだまま行ってしまった。


俺は手紙に視線を戻す。


『一つに戻すの。恋人同士が帰るのよ。きっと、その時は……で、止めましたよね?

この時は勇気がなくて、恥ずかしくて……。でも、今なら言える。後悔しないように……

きっと、その時は私達もイルカと同じように、恋をするわ。

冗談じゃない。子どもが考えた戯事ではなく、絵を分けたのも、言葉も真剣でした。

少女はあの日、恋をした。

凛とした瞳を二頭のイルカに向け、どこか悲しそうに、それでも水槽にしがみ付いていた少年に……。

別れは寂しかったけど、イルカの前なら奇跡は起こる気がしたの。再会を信じることができたの。

あなたに出会えてよかった。もし、もしも、本当にそれが一方的だったとしても、嬉しかった。嬉しかったよ、竜介。

傍にいてくれてありがとう。わがままな私を守ってくれてありがとう。

じゃあ、行ってくるね。


さようなら』

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