イルカ、恋うた
おまけ
――佐伯 美月 十五歳


ある日の夕食時


「なぁ、次の週末。久しぶりに休めそうなんだ。どこか行かないか?」


佐伯は、娘を誘った。


「嫌よ。この歳で、父親と二人で、なんて」


「そんなこと言うな。久しぶりに、あの水族館に行きたいんだ」


普段は厳格な父親が、やけに寂しそうに言う。


そこは亡き母との思い出の場所。


「もう、仕方ないなぁ」


美月は苦笑しながら、承諾した。


そして、週末―…


親子は水族館へ。


かつて、二人きりにした水槽の前で、父は感慨深げに立ち止まってしまった。


湿りはじめた、父親の瞳を見て、彼女は気を遣って、静かに先を進んで、一人にした。


すると、美月も思い出の地に着いた。


子ども達が数人、その水槽の前で、スケッチブックを広げてた。


邪魔しないよう、静かに空いてる側から水槽に近づく。


そして、イルカを見ていた。


しばらく、見入っていると、そのうちの一人の女の子に声をかけられた。


「お姉ちゃん、イルカ好き?」


「うん。大好き」


笑顔で答えたのに、その女の子は意外なことを言う。


「……なのに、寂しそうね」


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