イルカ、恋うた

過ち

佐伯検事正に、彼女は買ってきたカーディガンを見せたが、ピクリとも笑わなかったらしい。


しかも、「今日は早く帰ってくれ」と娘に言った。


落ち込む、美月を岩居さんは慰めていた。


俺は何も言えなかった。


どうしても自分が、この親子や、桜井検事との関係を乱したとしか思えなかった。


だから、どう言葉をかけていいか分からない。

美月を、真っ直ぐ佐伯宅に送った。


車を横付けして、彼女を下ろし、門まで送った。


車内に戻ってすぐ、タクシーが前に止まる。


降りてきたのは、少しフラフラと歩く…


「桜井検事?」


と、俺が言うと、岩居さんも彼を見た。


そして、気付いた。


「ありゃ、酔ってるぞ。検事が三時のおやつに酒かぁ。確かに、今日は休暇とは聞いてたが……」


門の前にいた、警察官に手を差し出されたが、それを弾き返し、中に入っていった。


「行きましょうか」


と、運転席の岩居さんに声をかけた。


「なーんか、嫌な予感がする…」


と呟く。


「あはは。なんすか、それ」


本当に、たまに変なことを言うな、と笑い返していた。


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