みだらなキミと、密室で。

「有馬遥琉がもし元カノちゃんとヨリ戻したら、海風ちゃん俺と付き合ってくれる?」

「……っ、えっと」

怖くて想像できなかったことを言われて、言葉に詰まる。

遥琉が、本格的に、誰かのものになってしまうかもしれない。

そっか……この時間でそんな未来が今作られている真っ最中かもしれないんだよね。

初キスだって彼女とだし。
はじめての恋人って特別だって言うし。

そもそも、遥琉の口から乃々歌ちゃんに言ってたんだ。

『海風はただの幼なじみ。ほんとなにもないしこれからもなにもないから。そもそも女として見れないって』

思い出したくもないセリフが何度も脳内で再生される。まるでこの言葉に呪われてるみたいだ。


「そんな顔、しないでよ」

私を真っ直ぐ見つめる伊月さんの手が伸びてきて頬にふれる。

「……伊月さんが悪いんですよ、こんな変な計画立てて」

「まだ付き合うって決まったわけじゃないでしょ」

「それが目的なんでしょ、伊月さんは」

「……んー、そうだったはずだけど、わかんない」

わかんないって。なにそれ。無責任すぎるよ。

もし遥琉と乃々歌ちゃんがそうなったとしても、それは遥琉と乃々歌ちゃんの気持ちが同じだったって証拠

伊月さんの今回の計画はただのきっかけにすぎない。

今日のことがなかったとしても、遥琉の心の中には乃々歌ちゃんがいたってことで。

どっちにしろ、伊月さんが全部悪いって言うのは違う気がしてあんまり責められなくて。

悲しさと悔しさと惨めさで、唇をギュッと噛んだ。
< 195 / 300 >

この作品をシェア

pagetop