俺の妻は本当に可愛い~恋のリハビリから俺様社長に結婚を迫られています~
お互いのため、リハビリの、かりそめの婚約者だと言い聞かせてきた。

納得していたはずだったし、失恋したばかりでほかの人に想いを向けるなんて絶対にないと思っていた。


それなのに……愚かにもまた恋をしてしまった。

もうどうしようもない、この引き裂かれるような胸の痛みはこれ以上誤魔化せない。


……あの人が好きだ。


悲しいくらいに惹かれてしまっている。


「どうして今頃……」


ポタポタと顎をつたって落ちる涙が豪華なドレスに染みを作る。

汚してはいけないのに、早く脱がなくてはいけないのに動けなかった。

自覚したばかりの気持ちが衝撃的すぎて、情けなさすぎた。


真実を教えてほしかった。

昔、付き合っていた人の未練を断ち切るためにも、婚約者のフリをしてほしいと言ってくれたならまだよかった。

だからこのドレスを着てほしいと言われたならまだ期待できたかもしれない。


でもそれすら言ってもらえない私は、あの人にとって結局その程度の存在でしかないのだ。


『沙和』

『可愛い』

『俺のものだ』


名前を呼んでくれて嬉しかった。

心地よい低音で呼ばれるたびにドキドキして落ち着かなかった。

胸が甘く締めつけられて、どこかくすぐったかった。


どうして私の恋はいつも届かないの? なにがいけないの? どうしたら受け入れてもらえるの?


どんなに泣いても慰めてくれる人は誰もいない。

小さなパーティーバッグの中で鳴り続けるスマートフォンを見もせず、その場でただ長い時間泣き続けていた。
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