俺の妻は本当に可愛い~恋のリハビリから俺様社長に結婚を迫られています~
「仕事が終わるのは、遅くなる?」

不意にこぼれ落ちた言葉に思わず口を押さえた。

失言だ。


立場も責任もあるこの人の仕事について詮索するつもりはないし、そんな資格もないとわかっている。

仕事の大切さもどれだけ多忙なのかも理解しているのに。


項垂れるとふわりと大きな身体に包まれる。

「なんで落ち込むんだ?」

気持ちを瞬時に見破られて驚く。

「お、怒ってないの?」

「愛する女性に自分の予定を気にされて、なにを怒るんだ?」

当たり前のように言われて泣きそうになった。

「わがままを、言ったのかと思って……それでなくても愁さんは忙しいのに」

「それはわがままじゃない。むしろ離れたくないと思ってくれているのかと嬉しくなる。だが悪い、今日は遅くなる。ここで待っていてくれてももちろん構わないよ」

私の背中をあやすように撫でながら話す低い声が心地いい。

「あの、でもそれは……」

昨日の今日でさすがに気恥ずかしいし、急速に近づく距離にまだ戸惑う自分もいる。


「一緒に暮らす決意を早くしろよ?」

最後まで逃れられそうにないセリフを吐いて、颯爽と部屋を出て行く。


ああもう、絶対に断れそうにない……。
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