俺の妻は本当に可愛い~恋のリハビリから俺様社長に結婚を迫られています~
好きな人とすれ違うのは怖い。

好きだからこそ言い出せない言葉はたくさんある。


失うかもしれない恐怖、嫌われてしまうかもしれない不安など考え出したらきりがない。

両想いになったからといっても心配事は尽きない。


辺見さんと立花さんもそうだったんじゃないだろうか。

お互いを大切に愛しく想えば想うほど空回って、すれ違ってしまう場合は多々ある。


だからこそ話し合わなければいけないし、本心を晒さないといけない。

その大切さを愁さんは身を持って教えてくれた。


逃げて自分ひとりで抱えてやり過ごそうとしていた私を、強引に引っ張り出して諭してくれた。

私とは正反対に近いような考えを持っていながらも、私の気持ちをなにより理解してくれる人。


「愁さんを信じてる」

「俺は沙和を信じているし、信じてもらいたい、ずっと」

とてつもなく凄艶な微笑みを向けられて、心拍数が上がる。

この人はどうしてこんなに私が欲しい言葉を当たり前のようにくれるのだろう。


久しぶりに会った恋人は相変わらず魅力的だ。

会いたかったのに、恥ずかしさも邪魔をして素直に口に出せない。


「……ありがとう、早く帰ってきてくれて」

万感の思いを込めてそう伝えると、いたずらっ子のように片眉を上げる。


「どういたしまして。沙和は変なところで強気で無防備だから、目が離せない」


それ、褒め言葉なの?


「心配だから早く引っ越してきてほしい」

茶化すような口調のくせに、真剣な目で見つめてくるから返答に困る。
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