一樹君の恋人は天使なんです

「ごめんね末森君。私の事好きだって言ってたけど。やっぱり私には、貴女は不釣り合いなの。私の家ね、昔からの資産家なの。両親とも昔からの老舗旅館を経営していて。お客はいつも満員御礼で、他にも投資もしていてお金は余るほどあるの。ここの事務所にも、父と母が援助しているのよ」

 お金持ちなんだ…だから、我儘なんだね。

 悠はそう思った。


「末森君も、捨てがたいけど。私にはやっぱり、お金持ちの家柄じゃないと不釣り合いなの。末森君って、一般家庭の人よりちょっと劣っているじゃない? 見てて分かるのよ、着ているスーツも安っぽいようだし。持っているカバンも、履いている靴も安物だものね。この事務所でどんなに頑張って働いても、末森君がお金持ちになれることはないから」


 まるで嘲笑うかのように、話す京香に悠はフッとため息をついた。

「お話はもう、いいでしょうか? 」


 ん? と、京香は悠を見た。


「貴方のお話はよく分かりました。所長と婚約されたのでしたら、それは良かったと思われます。…自分は、貴女の幸せを祈っています」

「ふーん。じゃあ、末森君は私と所長を祝福してくれるって事ね? 」

「それが事実であれば、自分だけではなくここの社員全員が祝福してくれると思われます」

「そっか、それなら安心ね」

「…もう宜しいですか? そろそろ、仕事に取り掛かりたいので」

「ごめんなさいね、邪魔しちゃって」


 とてもご機嫌そうに京香は去って行った。


 向かい側の席で見ていた美恵は、悠を心配そうに見ていた。



 


 お昼休みになり。


 悠は一息つくために、今日は何か買ってこようと思い外に出て来た。


 

 悠が歩いて来ると一樹がいた。

 一緒にいるのは一樹の弟の夏樹だった。


 悠は一樹と夏樹を見て、ハッとなった。

 
 気づかれないように、ちょっと回り道をする悠。

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