秘密の恋はアトリエで(後編) 続・二度目のキスは蜂蜜のように甘く蕩けて
 そんな外野の声はまったく無視して、靭也は大きく息を吐くと、マイクを口元に持っていった。
 そして、フルネームで夏瑛を呼んだ。

「原田夏瑛」

「は、はい」

 ためらいながら返事をすると、靱也はマイクを手にしたまま夏瑛の前に立ち、これまで見た中で一番の、最高に甘やかな表情をして言った。

「夏瑛、愛してるよ。おれと結婚してほしい」

 会場は一瞬、シーンと静まりかえった。

 結婚……

 あまりにも突然のプロポーズ。

 夏瑛は、足から力が抜けてゆき、その場にへたり込んでしまった。

 すると、遅れてやってきた美岬がステージに駆け上がってきて、片手で夏瑛を支え、もう一方の手で靭也にハイタッチした。

 「すごい! やるじゃん。靱先生」

 それが合図となった。

 女の子たちの悲鳴やひやかしの歓声で、場内は騒然となった。

 騒ぎはしばらく収まらなかった。
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