秘密の恋はアトリエで(後編) 続・二度目のキスは蜂蜜のように甘く蕩けて
「あのさ、ここで自殺未遂した女の話、覚えてる?」

「えっ」

「あの相手の男、沢渡だったんだって。この間、姉ちゃんが言ってた。当時から沢渡の女癖、悪かったらしいよ。言いよってくる女を手当たり次第に相手して、すぐポイ捨てするって」

「そんなことを言うためにわざわさ呼び出したの?」(いぶか)しげに問う夏瑛の脇を通って、北川がアトリエの扉を閉めた。

 扉の(きし)む音が、なぜだか不穏に響いた。

「いや、もっと大事な話がある。でも、ぼくが、話があるって言ってもどうせこんなところまで来てくれないと思ってさ」

 微笑んではいるけれど、いつもの気さくな北川とは別人のようだ。

 ふたりきりでいるのはまずい。

 本能的にそう感じた夏瑛は、(きびす)を返して出て行こうとした。

 そのとき、北川が言った。
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