ヒステリック
1.恋?私が、あの人に?


貴方の存在を初めて知ったのは、入社して半年頃のステップアップ講習だった。

教育係として数人の前に立った貴方。

スラッと、折れそうなくらい細い長身、HYSTERIC GLAMOURのTシャツ、黒縁メガネ、その奥の長い睫毛、そしてふわふわの天然パーマ。

好みな雰囲気だなって、最初はそれだけ。

柔らかい話し方と少し小さめの優しい声。
品物を手に取り説明してくれる時の骨張った大きな手と長い指。
HYSTERIC GLAMOURのシャツに合わせたジーンズと少しゴツめのスニーカー。

気付けば目で追っていて、その姿を探していた。


「んー、難しいですよねー。でも慣れです、大丈夫」


講習中、難しくて頭がパンクしそうな私にそう何度も優しく声を掛けてくれた。

他の先輩と違って怖くないし優しいから、つい質問に行く回数も増える。

面倒臭がらずに丁寧に教えてくれる、その声を、指先を、眼鏡の奥の睫毛を、つい目で追ってしまう。



講習終わりの品物の受け渡しの時、ふと私の指先が貴方の指先に触れる。

温かい、感触……


「わ、冷たい。寒いですか?」


貴方はそう言うと私の方を心配そうに見てくる。
手は、確かに冷たかったけど貴方と目が合って私の体温はぶわっと上がった、気がする。


「いえ、大丈夫です」


そう答えるのが精一杯。



もう気付いてる、初めて会った時から、所謂一目惚れってやつで……これは、恋だ…
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