他校生
今日も昼休みにむっちゃんはお弁当を持って、うちのクラスにやって来た。
やっぱり、この状況を思うと
ふっちーの好きな子が紗香ならなぁって思えない。
だけど、今までの紗香の言動からも
ふっちーの好きな子がむっちゃんならなぁとも思えない。
お弁当を広げる前に、むっちゃんが聞いた。
「昨日、バスケの練習一緒に見てた子だよね、紗香ちゃんって」
……小窓で見てたのに気づいたのか。
「うん」
正直に頷いた。
「2階上がってくるのかなぁって思いながら練習見てたんだけどさ、ずっと、外で見てたの?」
「うん、そうなの」
「それってさぁ、ふっちーと喋る為?」
「いや、逆。見てるのをバレたくないからだってさ」
「そっかぁ、楽しそうに喋ってたからさ」
むっちゃんは、はぁーっと息を吐くと
「すっごい可愛い子だった……」
小さな声でそう言った。
……ああ、むっちゃんはむっちゃんで……
昨日は辛かったんだな。
そうか、紗香って可愛いし、自分と好きな人が同じだと…嫌だな。
紗香が、ふっちーとむっちゃんが喋ったり目があったりするのが嫌なように
むっちゃんも、紗香とふっちーを見るのは……
あーあ、本当、分かり過ぎるくらい、分かる。
紗香とふっちーがうまくいけばいい…なんて、ますます、思えない。
もちろん、うまくいくな…とも。
「ねぇ、むっちゃん、今日もバスケ部見に行く?」
「うん!もちろん!」
間髪入れずにそう言う。
それでも、好きなんだなぁ。
「見たいんだもん」
「何かむっちゃん、色々吹っ切ったねー!」
さっちゃんに、そう言われてむっちゃんは少し赤くなったけれど
「仕方がないよね、好きになっちゃったんだもん。ライバルが多いのは知ってる。あんなに格好良かったら当然だと思うし…」
「ねぇ、ふっちーが他の子を好きで、その子と付き合ったらどうするの?」
聞いて見たかった。
どうするのか。
「今さぁ、ふっちーが好きな人が、私の可能性が一番低いと思う。だから、他の子を好きな可能性が……高い。それ、分かってるから……どうもしない。努力で何ともならないし、彼女になれるのって1人でしょ?その子の恋が実ったというか、ふっちーの恋が実ったとも言うよね」
……そう…なるのか。
「ぐちゃぐちゃに落ち込んで……そっから…どうするのかなぁ?だけど、そっから考える。諦める努力をするのか、それとも……いつの間にか忘れるのか……他の人を好きになるのか。分からないよね」
むっちゃんはそう言った。