他校生
そうなってみないと……か。


そうなった、私は今、どうしようかな。


重苦しい気持ちはそのまま。

紗香に向けてはいけない。

あの彼が私を知っているか…は、微妙。

覚えているものかな。


時間が過ぎれば過ぎるほど、姿はおぼろ気に…
制服が変われば別人に思えるかもしれない。


相手が自分を認識しているか分からない。


とても諦めやすい環境にいる。


別の学校だし
今日と明日だって、体育館に行かなければ会うこともない。


それなのに……


「むっちゃん、私の好きな人、K高のバスケ部にいたんだ」


そう言ってしまった。
さっちゃんが少し驚いた顔して


「誰!?」

セイが前のめりになって…


私の言葉が聞こえただろうふっちーも


「石橋の知り合いの奴じゃねぇ?」

勘よくそう言った。



もう、いいか。
半分以上ヤケになって


「そう!そうだよ」

そう言いきった。



「……俺と同じくらいの背、面食いだな、お前」


そう言われて

「逆に顔しか知らないよ」

咄嗟に子供を助けてたくらいだから優しい人なんだろうなって思うけど。


「石橋に言えば、取り次いでくれるだろ?」

「言えない。ごめん、言わないで?」

「……何かあんの?」


そこから、私が黙ったもので

代わりにさっちゃんが



「ほら、まだそこまでって言うか、ね?」

そう言ってくれて

頷く。


「……俺が取り次いでやろうか?」

「今は、いい。かな……」

とだけ答えた。


向こうが覚えてくれていたら…
そんな淡い期待も、彼が紗香を好きだっていう事実にかき消される。



「とりあえず、今日は中で見ろよ」

ふっちーが私の頭にポンと手を置いて、教室を出て行った。




「どーゆーこと?」

むっちゃんとセイが小声で寄って来たのに



「彼ね、好きな人がいるみたい。その人には、振られてるんだけどね」

と、だけ説明した。



「え、振られてるの?」


「うん、その女の子には他に好きな人が」


「あ、じゃあ諦めてる最中か、諦められずにいるか、もう諦めたかどれかだね」

むっちゃんがそう言った。


「あー…そうだね」

確かにそうだ。


「彼女がいないなら、それもチャンスじゃない?朱里の方を向いてくれるかも」

むっちゃんの言葉に


「逆にそっちの女の子が振られたら、その男子にも同じことが言える」

セイがそう言って


「もう!セイ!」
むっちゃんは怒ったけど


「本当だ、そうだね」


「結局、何が起こっても不思議じゃないんだよ、今諦める必要、ある?」

さっちゃんが笑って、むっちゃんが同意して

セイがプリッツをすすめてくれた。



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