他校生
むっちゃんと、セイが自分のクラスに帰って

さっちゃんが自分の席に戻ると私の回りは静かになった。




「上手く、いったんだ?」

「うん、お陰様で……」

「良かったな、はは!」

「何?」

「いや、マジ、石橋の事は誤解だったんだなって」

「ホッとした?」

「かなり」

「誤解、溶けてないのは紗香だけだね」


本当はとっくに解けてるけど、敢えてそう言った。

ふっちーがこっちへ顔を向けて固まった



「何とかしなきゃね」

そう追い討ちをかけるように言った。


「俺が…ね」

ふっちーも分かってる。


だから、頑張れ。心の中でそう言った。

それと、もう一つ。


「工藤くん、F大のセレクション狙ってるんだって」

「……マジ?」

「うん、ダメでも一般でF大目指すんだって。F大でバスケしたいって」


「偏差値……いや、F大のバスケ部なんてセレクションしか取らねえだろ!?」


「素質があれば、一般でも取ることもあるって言ってた」


「トライアウト的な?ああー、スポーツ推薦で行きてぇなぁ、それは…」


「色々考えてるんだってびっくりした」


「ああ、何かそれ、ヘコむ。俺もF大行きたいけど、口に出すのも憚られるっつか……」


「私も、F大……行こうかなって」


「安易じゃねぇ?」


「総合大学だからね、学部いっぱいあるし……それに、同じ学校に行けるんだよ?」


「単純!……だけど、いいな、それ」


「推薦狙う」


「俺もスポーツ推薦狙うか!」


「頭もいるよね」


「バカ、元々スポーツも頭いるだろ?」


「じゃ、これは?」


右手でポーズを作る


「サイン、コサイン……じゃねぇな、なんだっけ?」


「あはは!」


「ちっ、あー、でも今から目標持つの、いいな」


「紗香も誘ったら?F大どう?って!」


「お前なぁ、ポテトでも食ってく?ってノリでF大かよ!」


「ノートの貸し借り……学食……一人暮らし……キャンパスライフ!」



「俺が…ね」

ふっちーが笑って……


「俺がね…頑張るしか、ねぇのよ」


ふっちーがスマホをポケットから取り出すと


『話したい、事がある』

紗香宛にそうメッセージを書き込んだのを、私に見せてくる。


画面をタップすると

送信画面。



直ぐに既読になったのに、吹き出しそうになったけど……


今度は私のスマホが鳴る。

ふっちーに気づかれないように



『頑張れ!』

そう送った。





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