白雪姫に極甘な毒リンゴを 2 (十環の初恋編)

 総長の言葉を聞いて
 固まってしまった俺の口。


 親に捨てられて
 母さんのお兄さん夫婦に育てられたけど。


 俺の人生の方が
 のほほんとしている気がしてきたから
 不思議。


 総長の家に生まれてこなくて良かったって
 心底思ったし。


 そう思った時には
 総長に感じていたムカムカが消え
 心から伝えたい言葉が込み上げてきた。


「総長がいてくれて

 本当に良かったです」


「は? なんだよ、急に」


「俺。

 あの時総長に拾われてなかったら
 今頃どうなっていたかわかりません。

 どん底の俺をすくいあげてくれたのは
 間違いなく、総長だから」


「十環~~~~~!!!」


 総長……

 電話越しで、泣いている??



「そんなこと言うなよ。

 俺、威厳があるように見せるために
 強がってるけど。

 本当は、涙腺
 スゲー弱いんだからな」


 今まで総長が
 涙を流した姿を見たことなんて
 1度もない。


 悲しみなんて無縁ってくらい
 いつも堂々としていて
 カッコいい人だったから。


 でも俺は
 人間の弱さみたいなものを
 電話越しに見せてくれた総長のことを
 今まで以上に大好きになった。
< 107 / 161 >

この作品をシェア

pagetop