白雪姫に極甘な毒リンゴを 2 (十環の初恋編)


 私立 明虹(めいこう)学園。


 『オシャレがモットー』のこの学園は
 自分に似合っていれば
 どんなオシャレをして高校に来てもいいという
 変わった高校。


 制服は着なければいけないが
 髪の色が金髪だろうが
 鼻にピアスをしていようが
 似合っていれば問題なし


 逆にその人に
 似合っていないオシャレをしていると
 学園長室に連れ込まれ
 元トップモデルの学園長様の
 ありがたいファッション論を
 長々と聞かされるとか。


 オシャレが大好きな俺
 赤城一颯(あかぎ いぶき)は
 『絶対にこの高校に入りたい!!』
 その一心で、中学の3年間を
 勉強とファッションに捧げてきた。


 昨日の学科試験の手ごたえも良かったし
 集団面接ではなく、俺一人だけ
 学園長室で面接を受けることになったし。


 入学式の時に
 『新入生挨拶をやってもらえない?』とか
 言われっちゃうのかなって、
 入学後のことも妄想して
 ニヤニヤしていたのに……


 それなのに……


 今、俺の目の前にいるこの学園長は
 なんて女だ! 


 いくら私立の高校だからって
『30年前に私を振った男にそっくり』って
 個人的な理由で、俺を不合格にすんなよ!


 俺の3年間の頑張りを
 簡単にゴミ箱にポイって捨てられた気分になり
 俺の真っ白なハートを
 どす黒い液体がどんどん浸食していく。


 自分の決めたことは絶対!
 そんな身勝手オーラが
 ビンビンに漂っている学園長に
 何を言っても無駄かもしれない。


 そう思ったが
 中学3年間の自分の頑張りを思い出すと
 悔しくてしかたがない。


 俺は今にも噴火しそうな怒りを
 なんとか抑えこみ、口を開いた。


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