三月のバスで待ってる



どっと疲れて、帰りのバスに乗り込んだ。

たった1日学校に行っただけで、この有様。明日も明後日もこんな日々が続くのかと思うと、ため息しかでなかった。

扉が開き、違う高校の男の子が数人乗り込んできた。もうバス停には誰もいないのに、なぜか扉は閉まらない。

行かないのかな?と不思議に思っていると、想太が急に立ち上がって、客席のほうを見た。

「みなさん、すみません、少々お待ちいただけますか。すぐ戻りますので」

反応はまちまちだった。頷く人もいれば、不満そうに小声で文句を言う人も。

「塾あるから早くしてほしいんだけど」

「待たせんなよ。コッチは忙しいんだよ」

さっき乗ってきた違う高校の男の子たちが、参考書を開きながらぶつぶつ文句を言っている。

どうしたんだろう。ヒヤリとしながら扉のほうを見ていると、腰の曲がった小さなおばあさんが、手押しのカートを押しながら、ゆっくりと昇降のスロープを登ってきた。

「お待たせいたしました。こちら、空いている席にどうぞ」

想太がにっこり微笑んで言うと、おばあさんも目を細めて笑う。

「わざわざすみませんねえ。助かったよ」 

「困ったときはいつでも遠慮なく言ってくださいね」

「ありがたいねえ」

2人の和やかなやりとりにつられて、お客さんたちの表情も和むのがわかった。文句を言っていた男の子たちも、気まずそうに黙り込む。

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