二度目のキスは蜂蜜のように甘く蕩けて番外編『京都の夜』
 新幹線にゆられて、2時間と少し。
 京都駅に到着した。

 頭がぼーっとするぐらい暑かった車内から寒風の吹くホームに降りたち、おもわずコートを掻きあわせる。

 靭也の知り合いのバーは、繁華街から少し裏道に入って、さらに迷路みたいな細い道を抜けた先の突き当りにひっそりと佇んでいた。

 古い建物だ。

 壁もドアも黒一色で、ドアには金色の美しい書体で「noir」と書かれた小さな表札がかかっているだけだった。

「開店前だから、まだいないかもしれないけど」

 靭也がドアを押すときーっと軋んだ音がした。

「お、開いてる」

 店中は暗かった。目が慣れるまでしばらくかかった。

 細長いフロアの奥にバーカウンターが設えられており、グランドピアノも置かれている。

 入って右手の壁にぽつんと一点、銅版画が飾られていた。

 その版画は黒一色の内装に溶けこんでいて、店の雰囲気にとても似合っていた。

 夏瑛がものめずらしげに店内を眺めていると、扉が開いて奥から店主らしい人が出てきた。
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