強引な政略結婚が甘い理由～御曹司は年下妻が愛おしすぎて手放せない～

たぶん、千華ちゃんは私に気を使ってこのチラシを引き出しへ閉まったのだろう。旦那の元恋人が写っているチラシなんて普通は見たくないから。

だけど、そのチラシを見ても私は動揺したりしない。

「それならもう見たよ」

そう告げると、千華ちゃんは「えっ」と大きな声を出す。

「明さんもう見てたんですか？」

「うん。今朝、駅前にあるビルの看板がそれに変わってたから」

会社の最寄駅に着いて驚いた。向かいのビルの上に設置された巨大看板に東雲優愛さんが写っていたから。

「明さんの前で優愛の話題はタブーだと思って、慌てて隠しちゃいました」

「気を使ってくれてありがとう。でも大丈夫だよ。千華ちゃん、東雲優愛さんのこと好きなんでしょ？」

優愛さんがうちの会社に来たときの千華ちゃんは、とても感激した様子だった。優愛さんについての情報も詳しく知っていたし、たぶんファンなんだろうな。

すると、千華ちゃんが頷いた。

「はい。明さんを前にとても打ち明けづらいんですけど。私、高校生の頃から東雲優愛に憧れていて、服装や髪型、メイクを真似しています。だって、見てくださいよこのチラシを」

興奮した様子でそう言って、千華ちゃんは優愛さんの写ったチラシを私の顔の前に持ってきた。

「めちゃくちゃキレイだと思いませんか!! この溢れ出す色気!! 真っ赤な唇がセクシー過ぎてもうたまりません!! こんな表情で迫ってこられたら、どんな男もイチコロですよ」