強引な政略結婚が甘い理由~御曹司は年下妻が愛おしすぎて手放せない~
きっと明にはもう俺のいない新しい生活が出来上がっている。


母親の死を乗り越えて、今は穏やかに暮らせているならそれでいい。


もしかしたら、俺以外の男がそばにいて、俺のことなんか少しも思い出さないくらいにその男と幸せに過ごしているのかもしれない。


そうだとしたらジャマするのは良くない。


俺は明と距離を置くことにした。


それからしばらくして、友人の紹介で優愛と出会い、彼女から熱烈なアプローチを受けた。

その頃の俺はまだ明への想いが消えていなかったけれど、優愛と付き合うことで明への気持ちを断ち切ることができるかもしれないと思い、彼女との交際を始めた。


でも、ダメだった。


どうしても明のことが忘れられなくて、そんな自分の感情を必死に隠していることがつらかった。

優愛に対しても、本気で好きになれないのに、それなりにうまく付き合おうとしていることに罪悪感のようなものをずっと抱いていた。

だから、優愛から別れを切り出されたとき、ホッとしたのを今でもよく覚えている。


俺は、きっともう明以外の女性を本気で好きにはなれない。


そのことに気が付いたとき、友人の結婚式に出席するため Viola Luna に来ていた明を偶然見かけた。

この再会を運命なんていう言葉で表現するのはおこがましいのかもしれない。でも、俺はあのとき、神様に言われた気がした。


明と交わした約束を守っていい、と――



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