強引な政略結婚が甘い理由~御曹司は年下妻が愛おしすぎて手放せない~
私と真夜の結婚は親に決められたものだから、プロポーズなんてあるわけがない。
けれど、婚約指輪を貰って幸せいっぱいな千華ちゃんを見ていると、少しだけ羨ましいと思ってしまう。
私の子供の頃の夢は、真夜のお嫁さんになることだった。
それが叶ったのにそれほど嬉しく感じないのは、やっぱりこの結婚が親に決められたものだからなのかもしれない。
そんなことをぼんやりと考えていると、デスクのすみに置いていたスマホがブルッと震えた。メッセージを受信したらしい。こっそり確認すると真夜からだった。
どうやらドイツでの仕事が伸びてしまい、帰国が予定日より二日遅れた土曜になってしまうらしい。
【了解】とだけ打ち込んですぐに返信をしたけれど、なんだか気分が晴れない。
あのときは、寂しくないなんて言ってしまったけれどあれは大嘘だ。
本当はすごく寂しい。
真夜の顔が見たい。
真夜の声が聞きたい。
真夜に早く帰ってきてほしい。
でも、私はそれを正直に真夜に伝えられない。
この前の電話のときは、予定通りに帰れるって言っていたのに真夜の嘘つき。
仕事だから仕方がないと分かってはいるけれど、約束を破られてヘコんでしまう。
そんな沈んだ気分を紛らわせるために、私はさきほど【了解】とだけ送った短いメッセージのあとに、うさぎがベーッと舌を出しているスタンプを一緒に送った。