強引な政略結婚が甘い理由~御曹司は年下妻が愛おしすぎて手放せない~
子供の頃から、真夜がそばにいることが当たり前だった。

真夜は社会人になり、私は高校生になって、以前よりも会う回数は減っていたけれど、それでも会いたいと思えば会える距離に私たちはいた。

でも、真夜が外国に行ってしまったら、これまでみたいにすぐにはもう会えない……。


私は、中学生になった頃から、真夜に恋をすることをやめていた。いや、正確に言うと、真夜への恋心を必死に諦めようとしていた。

物心ついたときから真夜のことが好きで告白を続けていたけれど、いつまで経っても真剣に受け止めてもらえないし、次から次へと違う彼女(美人ばかり)と付き合っているし、このままもう私の想いは真夜には届かないと気が付いたから。

でも、真夜が私の中で特別な存在だということは変わらなかった。

どんなに諦めようとしても、やっぱり私は真夜のことが好きで、真夜以外の人を好きになることができない。

私の中で真夜は、それほど大きな存在だった。


遠い外国の地へ行ってしまうと知ったとき、私にはやっぱり真夜が必要なんだと改めて気付かされた。


お土産なんていらないから、バリに行かないでほしい。

どこにも行かないで、真夜……。


あと少しでそんな言葉が口からこぼれそうになった。でも、なんとか呑み込んだ。なぜかそれだけは言ってはいけないような気がした。


それから一ヶ月後。

予定通り真夜はバリへと旅立った。


そしてそのわずか三日後。

入院中だった母の容態が突然悪化し、そのまま息を引き取った――


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