新妻はエリート外科医に愛されまくり
彼の望み、夫婦の願い
語学学校も、週末に起きたショッピングセンターの銃撃事件の話題で持ちきりだった。
この街に住んでいる生徒たちにとっても、極めて身近な事件だ。
特に、銃に慣れていない日本人の怯えは色濃い。


「ニュースで見たけど、現場で救護活動に協力した日本人医師って、あれ、葉月さんの旦那さんですか?」


休み時間に、学君が私の席に近寄ってきた。


「州立大学医学部の、Dr.各務って。そうですよね?」

「えっ!? あ、ああ、うん……」


こちらのニュースでは、颯斗のことも報道されたのは知ってたけど、まさかそれが私の旦那様だと気付く人がいるなんて、思ってなかった。
ちょっと怯みながら返事をすると、私の隣に座っていた日本人女性、遠山(とおやま)恵美子(えみこ)さんが聞き拾ったようで、


「え、仁科さん、あの事件の時、ショッピングセンターにいたの!?」


と、ギョッとした声をあげる。


遠山さんの旦那様は、フィラデルフィアにある日本企業の派遣社員だ。
赴任してきたのはこの春で、必要に駆られて語学学校に通うようになった経緯も、わりと私と似ている。
私より五つ年上の三十五歳で、四歳になる男のお子さんがいる。
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