【最新版】異世界ニコニコ料理番~トリップしたのでお弁当屋を開店します~
「私もお母さんみたいに、毎日を必死に生き抜いている人たちを笑顔にするために、ニコニコ弁当を届けるんだ。もちろん、旅する私たちも楽しみながらね!」

「その、ニコニコ弁当って?」


 ランチワゴンを眺めている私の隣に、エドガーが並んで尋ねてくる。


「あ、話してなかったっけ。お店の名前はずばり、ニコニコ弁当!」


 自信満々に宣言すると、オリヴィエはげんなりした顔で「ネーミングセンスに問題あり!」と却下してくる。自分で作った油に『オリヴィエスペシャル』なんて名前を付けた人には、言われたくない。

 でも、他の皆は「元気印の雪らしい」と賛成してくれた。私はまだ「品がない、パンチが効いてない、ダサい」と、ぶーぶー不満をこぼしているオリヴィエを無視して、ランチワゴンの中から制服を取り出す。


「じゃじゃーんっ、これニコニコ弁当屋の制服です!」


 私は白のフリルがついたヘッドドレスとニコちゃんマークが入ったオレンジのエプロンを服の上から身に着けて、くるりと回ってみせる。


「多めに作っておいてよかった! はい、皆の分」


 私は皆にもエプロンを配る。

 もちろん、ロキがつけられるように小さなサイズのものも用意した。エドガーもだが、ふたりと離れることは少しも考えていなかったので、勝手に手配したものだ。


「このマークは、俺には不釣り合いではないだろうか」


 バルドさんは、困惑気味にエプロンのニコちゃんマークを自分の顔に近づける。そのアンバランス感が、なんというか……。


「かわいい! ギャップ萌えですよ、グッジョブ」


 親指を立てて、何度も頷いてみせる。ニコちゃんマークが人相の悪さを、むしろトレードマークにしてくれている。


「かわ……いい? 若者の考えることはわからんな。それから、ギャップもえ?とはなんだ?」

「普段のイメージとは違う一面に、キュンな感じです」


 首を捻るバルドさんにそう説明していると、背後からぶつぶつとなにかが聞こえた。振り返れば、オリヴィエがこの世の終わりみたいな顔でエプロンを握りしめ、小刻みに震えている。


「信じられません。僕がこんな子供みたいなニコちゃんマークをつけるだなんて……。今からデザインしなおすしか……」

「雪、出発はいつにするの?」


 エドガーが制服のエプロンを身に着けてやってきた。私はロキの頭にヘッドドレスをつけて、「すぐにでも!」と食い気味に答える。


 エドガーは目を丸くし、一拍置いて「了解」とだけ返事をすると家の戸締まりをはじめた。その横顔が嬉しそうだったのは、きっと見間違いじゃないだろう。


 旅立つ準備には、そう時間はかからなかった。持っていく荷物はさほどない。着替えとお母さんのレシピ本くらいだ。オリヴィエの幌馬車は、あとでリックベル商店の人が取りに来てくれるらしく、私たちは心置きなくランチワゴンに乗り込む。


 運転席にいるエドガーがエンジンをかけた。小刻みに揺れる車内に比例して、鼓動が早まる。


「出発進行!」


 エドガーがアクセルを踏んだ。ゆっくりと前進するランチワゴンに、自然と心が浮き立つ。
 行き先は決まってない。ただ気持ちの赴くまま、勢いのままに、私たちは旅へと出るのだった。
< 44 / 44 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:7

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

記憶の中で生きる君へ、この空に誓う
涙鳴/著

総文字数/102,646

恋愛(純愛)279ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
『君だけは、覚えていてくれないか。 俺がここに……確かに存在していたって』 全ては、屋上で、名前も顔も知らない 彼から告げられた、この一言から始まった。 『俺は、知りたい。アイツがどうして 死んだのか…。頼む、力を貸してくれないか?』    それは、私と彼の……亡き親友の記憶を集めて、 真実を求める為の、長い旅の始まり。 記憶と感情を読み取る少女と…。 親友を無くした少年の……。 明日への希望を見つける物語。 *:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆*:゚・:,。*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆ 素敵なレビュー、ありがとうございました! 雨宮みはる様 田山麻雪深様 姫咲優菜様 *:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆*:゚・:,。*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆
異世界ニコニコ料理番~トリップしたのでお弁当屋を開店します~
  • 書籍化作品
  • コミック掲載中
[原題]ニコニコ弁当届けます! 自分探しの異世界行脚
涙鳴/著

総文字数/115,087

ファンタジー204ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
母子家庭で育った雪は交通事故で 大好きな母を失い、天涯孤独に。 母の残したレシピを胸に抱え、 部屋でひとり泣いていると、 レシピ本は光るウサギに変わって 雪めがけて飛んできた! あまりの眩しさに 閉じていた目を開けると、 そこは家のフローリングではなく森、森、森! 喋るウサギ──ロキに導かれるまま、 雪が出会ったのは個性的な三人。 髪はボサボサ、髭も伸び放題で部屋は汚い。 生活能力の欠片もない 【謎多き発明家のエドガー】 空腹で行き倒れていた 【強面騎士団長のバルド】 年下だけど敬語で毒舌な 【やり手商人のオルヴィエ】 振る舞いはガサツで女好きな 【盗賊の頭、ランディ】 人の言葉を喋る 【お母さんウサギのロキ】 利害が一致し、一緒にランチワゴンで お弁当屋を開くことになった雪たち。 旅で出会う人、いろんな国、まだ見ぬ景色……。 これは、ちょっと個性的で、 生きる目的を見失った五人との 自分探しの旅──。
恋ぞつもりて、やがて愛に変わるまで。
涙鳴/著

総文字数/125,828

恋愛(純愛)226ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
決められた将来。 自分の意思なんてそこにはなくて。 いつも苦しかった毎日。 そんな私の目の前に君は現れて、 居場所をくれた。 『ありのままの君でいい』 そう言ってくれた君は、ふと笑顔を影らせる。 ねぇ、君が常闇に消えそうになってたら。 世界の果てでも、私が君に会いに行くよ。 君がどんな秘密を抱えていても。 何者でも構わない。 大好きな君に伝えたいことがある。 「……瀬をはやみ 岩にせかるる 滝川の われても末に あわむとぞ思ふ」 たとえ今は、恋しい人と別れても。 将来は必ず、結ばれると信じてる。 だからね、先輩。 もう一度会えたら。 恋ぞつもりて、愛に変わるその日まで。 私と一緒に、生きようよ。

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop