美髪のシンデレラ~眼鏡王子は狙った獲物は逃がさない~
「で、周りに何を言われるか・・・だったか?具体的に周りはどんなことを言うのかな?教えてくれないか?」

耳元で囁きながら髪を弄るのはやめて欲しい。

耳にかかる朔也の吐息と密着した腕の暖かさ、漂うシャンプーの香りに(しかも自分が作った!)変な気分になってしまいそうで怖かった。

「・・・」

「言わないならキスする」

「・・・何言ってるんですか!仮にも婚約者がいる方が不誠実です」

慌てた瑠花が溢した一言から、これまでの頑なな瑠花の態度の原因がわかって朔也はニヤリと笑った。

「仮、にも婚約者はいないし、なんなら恋人もいない。それって誰情報?」

朔也の言葉に目を見開いた瑠花は、本気で驚いた様子だ。

「誰って、但馬とか、副社長婦人とか、狭間部長とか・・・」

思い描いた人物像と完全に合致して朔也は嘲笑した。

こんなベタな展開、恋愛小説なら面白いのかもしれないが、恋路を邪魔されそうになった朔也にとっては妨害工作以外の何物でもなかった。

「ふうん、瑠花はそれを信じてやきもちを妬いて俺と距離を置こうとしたんだな」

「ち、違います。尊敬する心晴さんのお相手と噂になる訳にはいかないって思って・・・」

朔也への恋心を瞬時に否定され、朔也はムッとしながらも

「へえ、俺の相手は狭間心晴になってたのか。あんな俺様女、俺が好きになることも、あいつが俺に惚れることも一生ないな。そんなことになったら同類相憐れむで気持ち悪い」

と笑った。

゛Dシティで偶然会った心晴も同じようなことを言っていたが、それは朔也と心晴のことだったのか、なるほど良く似た思考だ゛

と、瑠花はぼんやり考えていた。

「だいたいタイミングが良すぎると思ったんだ。製造工場の一件は、対応に時間はかかったが原因は明らかに人為的な凡ミスだった。対応に追われているうちに、瑠花とは連絡がとれなくなるし、週明け出社すれば、瑠花は完徹して新商品をもう1つ作り上げ、退職届けまて出してくる始末。こんなのあいつらが絡んでいるとしか思えなかった」
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