美髪のシンデレラ~眼鏡王子は狙った獲物は逃がさない~
「姉さんだろ?私の秘密をベラベラと・・・。義兄さんと結婚してようやく落ち着いたと思ったのに、過去の愚行のせいでいまだに僕に迷惑をかけている」

但馬はため息をつくと、朔也を見上げて馬鹿にしたように言った。

「オッドアイの猫も三神主任も、私から横取りしてさぞかしご満悦のことでしょうね。お陰で私は災難続きだ」

但馬は、自分が行ってきたことが人道に反することだとは全く思っていない様子で肩をすくめた。

「副社長の色ボケも、浅子さんの嫉妬も、狭間部長の浅はかさも十分に利用させてもらった。いずれは切り捨てるべきアイテムだと思っていたのでもう未練はないですよ。三神主任も従順なペットではないならもう要らないし」

そう言いきる但馬は、悔しそうでも、残念そうでもなく感情のない目をしていた。

「そうか。あんたが瑠花に今後執着しないのならそれでいい。だが、自己都合で社に迷惑をかけた責任は取ってもらう」

心晴に執着する直人と、心晴を意のままに操ろうとする浅子。

そして、朔也を手の内におさめ懐柔しようとした狭間部長。

彼らの駒として、ラッキーのおこぼれをかき集めるためだけに奔走していた但馬。

「いいですよ。役目を果たさないラッキーアイテムのいる場所には未練はない。それに、金輪際、穂積部長の顔を見なくて済むのなら本望だ」

そう言い残した狭間の表情は、悪足掻きでも、虚勢でもない本心を表しているように見えた。

゛この男はどこか歪んで壊れている゛

朔也はこれ以上突っ込む気にもなれず、ニヤリと笑った但馬が、スタスタと社長室を出ていくのを言葉もかけずに見送った。
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