初恋エモ



大変な話になるかも。

そう覚悟したものの、あっさり解決した。


「はーい、巻き込んじゃってすんませんでしたー」


壁越しに下手くそな歌声が聞こえる中、クノさんは、私に向かってダルそうに頭を下げた。


「そんなことより歌ってくださいよー」「クノさんの歌聞きたいです~」


穂波さんはじめ女子たちはクノさんにマイクを渡す。


「ということで、みんなで楽しもうー! かんぱーい!」


ミハラさんの合図でみんなグラスをぶつけあった。

私もウーロン茶が入ったグラスを軽く掲げる。


ミハラさんがクノさんとウェーブ先輩、そして私にヒアリングしてくれた結果、もろもろの誤解がとけた。


そして、今私たちはカラオケボックスにいる。


うちらこの子の友達なんですー! というアピールにより、なぜか穂波さんたちも一緒に。


「間宮さんだっけ? もっとこいつのこと怒っていいんだよ?」

「あ、いえ。大丈夫です。ありがとうございます……」


優しく声をかけてくれるミハラさんに、顔を伏せながらお礼を言った。


その様子を横目で見たクノさんは、

「あのさーお前、言いたい事あればちゃんと言えよ。そんなんじゃクソみたいな男に遊ばれんぞ」

と、悪びれることなく私に説教してくる。

しかし、「あんたみたいなクソ男が言うセリフじゃない!」と、ウェーブ先輩にバシッと頭を殴られていた。


今の状況に置いてきぼり状態だったけれど、はっと息を飲んだ。

聴いたことのあるイントロが流れ、クノさんにマイクが渡ったから。

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