初恋エモ
クノさんが新たなバンドを組んだことは、教室でも話題になっていた。
私はなぜか口止めされているため、知らないふりをしたけれど。
「聞いた? クノさんライブするんだって!」
「うちも誘われた。超楽しみ!」
穂波さんたちはライブに来るらしい。少しビビる。
体育祭以降、穂波さんからは一定の距離を置かれている。
休み時間はいつもイヤホンで音楽を聴いているせいか、他のクラスメイトから話しかけられることもほとんどない。
教室では一人。
寂しいけれど、翠さんやミハラさんという友達ができた。だから大丈夫。
そう思ったけれど。
「間宮さん、文化祭委員やってくれるって本当?」
突然、クラスの女子にそう話しかけられ、びっくりした。
「え。私、立候補してないけど」
「間宮さんがやってくれるって、ラインで回ってきたよ」
無理だ。ただでさえ放課後は時間が惜しいのに。絶対にできない。
クラスのグループラインは通知オフにしたまま。
こまめにチェックしなかったことを後悔した。
「うわぁ……」
慌ててメッセージをさかのぼる。
穂波さんの発言により、私に係が押し付けられる形になっていた。
『すみません、バイトや家のことがあるので無理です』
そうメッセージを送っておいた。
「まじで? やってくれるって言ったじゃん。今さら誰がやんの? 最悪」
昼休み、穂波さんの声が教室に響き渡った。
クラスメイトたちもざわざわし始める。
「…………」
気まずくなり、教室を飛び出す。
急いでイヤホンを取り出し、音楽で耳を塞いだ。