初恋エモ


「お疲れ様でした~かんぱーい!」


あるイベント終了後、ライブハウスで軽い打ち上げがあった。

今日の出演バンドとお客さんが参加し、みんなで乾杯する。


「俺もビール飲みたい」

「声大きいですよ! 未成年ですからだめですって」


ブーブー言っているクノさんとあわあわしている私。


そんな私たちを見かねてか、


「生意気言ってないで、ちびっこたちはこれでも飲んどけ!」


店長がコーラをプレゼントしてくれた。そして……


「クノなぁ、バンドは弾き語りとはちげーんだぞ。ドラムとベースを置いてけぼりにすんな。あとオリジナル三曲しかないってアホか。さっさと作れ。どうせくだらないこだわりありすぎてできてねーんだろ」


店長からの怒涛の説教タイムがスタート。

説教は気に入ったバンドへの洗礼というウワサ。ありがたく受け取ることに。


ちなみに「ベースは音が弱いけど可愛いからなんでもOK」とのこと。

なんか悔しいぞ。もっと上手くなってやる~!


葉山さんは対バンさんやお客さんらしき女子たちに囲まれている。

お酒も入っていていつもよりテンションが高い。楽しそうだ。


店長の説教をくらいながらも、私はあることが気になっていた。


「この中で一番タイプなのは誰?」「絶対俺っしょ」「男は見た目じゃないぞ~」

「ちょっと~選べないよ~! みんなかっこいいから~!」


打ち上げには翠さんも残っていて、他バンドのお兄さんたちに囲まれていた。

翠さんはいつも以上にテンションがおかしい。

もしかしてお酒も入ってる?


「翠ちゃんは、彼氏はいるの?」

「え~どうかな。微妙な感じ~」

「じゃ~俺立候補する!」「俺も!」「俺も!」「どうぞどうぞー! ってやらねーよ!」


「あははは~! 超ウケる!」


うわぁ、あのバンドの人たちチャラい。

ライブはかっこよかったのに。なんかショック。


それにしても翠さんも翠さんだ。

クノさんがいるのに、何で他の男性と楽しそうにしてるの?

肩や頭とかにめちゃくちゃボディタッチしてるし。

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