水曜日は図書室で
街中のハプニング
 先日借りた四巻はすぐに読み終わってしまった。ハードカバーで、一冊も200ページくらいはあるのだけど、美久は読むのが早い。一週間も必要なかったくらいだ。
 あまり気に入ったので、ハードカバーだから少し重いのに毎日通学バッグに入れて学校に持っていってしまった。休み時間にもぱらぱらと、わずかながら読み進める。 そうしていれば読み終わるなんてすぐだろう。
 一巻、二巻、と区切られているけれど、一応、一冊ずつで区切りがつくようになっている。
 同じ登場人物が出てきて、でもすることや起こる事件は毎回違って……という具合だ。
 海外のファンタジー小説で、数年前にヒットしたらしい。はやった頃、美久はまだ小学生だったのでこの本のレベルにはまだ早く、名前を聞いたくらいで読まなかったのだ。
 でももう高校生。大人の読む小説だって普通に読める。子供向け、児童文学というものもおもしろかったけれど、大人向けは量が比べ物にならないほど多いし、ちょっと難しいけれどそのぶん読みごたえがある。
 今読んでいるこれは学園ものなのだけど、そこで勉強できるのは魔法なのだ。魔法使いの学校。
 主人公は一般家庭の子なのだけど、校長先生に目を留められて「素質がある」と、特別に上級の魔法学校へ進学を許される。
 そこで勉強したり、学校で起こるハプニングを解決したり……ときには友情や恋の物語もある。そして魔法を使って立ち向かう冒険もたくさんあるのだ。
 つまらないページなどないほどに魅力的な事件ばかり次々に起こる。もう寝る時間だとか、休み時間が終わるだとか、そういうときは後ろ髪を引かれる、という思いになるほどだった。
 それでも四巻は読み終わった。次は五巻だ。
 七巻まであって、ちょっと前に流行ったものなので完結しているらしい。つまり、一気に最後まで読めるのだ。美久はほっとしていた。
 今、続刊が出ているさなかというのもいい。次はいつ出るのかな、と楽しみにすることができる。
 でも、今すぐに一気に読めるというのは好奇心や興味がすぐに満たされるということである。
 どちらがいいというものではないけれど、とりあえずこのシリーズに関しては最後まで一気に読みたい気持ちが勝っていた。
 五巻を借りるのもいいなと思ったのだけど、今日の美久は図書室ではなく別のところへ向かっていた。
 それは本屋さんである。
 あまりおもしろかったから、このシリーズは自分で買おうかなぁと思うようになったのだった。
 ハードカバーの本はちょっと無理かもしれない。だって一冊二千円くらいはするのだ。
 でも文庫本なら。
 一冊千円しないくらいで買えるだろう。そりゃあ本好きとしてハードカバーでしっかりしたものが欲しい気持ちはあるけれど、中身を読めるのだったら、お小遣いが少ない今は文庫本でもいいかなぁ、と思うのだった。
 それだって七巻まで全部買えば七千円くらいになる。決してトータルでは安くない。
 だから全巻をぽんと買うことなど出来るはずなく。
 一ヵ月に一冊くらいで買おうかな、と思って。
 今日は視察のつもりで本屋さんに向かったのだった。
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