水曜日は図書室で
留依と恋人
 ずいぶん冷え込むようになっていた、十二月。もう下旬にさしかかった。
 あと一週間もすれば学校は冬休みに入る。冬休みは楽しいことがたくさん。
 年末に向けての大掃除はおっくうだけど、そのあとには家族でまったりできる大晦日が待っている。お蕎麦やおいしいものも食べられるし。
 年明けにはお正月。おせち、お雑煮、それにお年玉という収入があったり、あとは普段会えない、いとこなんかにも会える。
 もちろん、友達と遊びに行ったりもできるし……。
 その前にクリスマスもあるし。特にデートなどはしたことがないし、今年もその予定はないけれど……。
 そこで思い出したのは、留依のこと。
 留依はあの『テストが終わったら返事をする』という約束通りをはたして、告白してきたという同じクラスの青柳と付き合うことになった。
 それはある意味あっさりと表現していいのかもしれないけれど、二人にとっては全然あっさりではなかったことだろう。
 留依に直接告白してきたのもそうだし、留依だって返事をするのには勇気が必要だったはず。
 でもそれを乗り越えて、恋人同士になった。
 美久にとっては感嘆してしまうことだし、そして尊敬もした。
 二人のような勇気が欲しい。そう思わされたのだ。
 つまり、クリスマスで連想してしまったのは、留依たちはクリスマスにデートをするのだろうな、と思ってしまったから。
 恋人同士なのだ、彼氏、彼女なのだ。して当然だろう。
 そのとき美久は「いいなぁ」と思ってしまって、恥じ入ってしまった。
 いいなぁ、なんて。
 まるで自分にもデートをしたい相手がいるみたいではないか。

 いや、……いない、ことも、ない、のかも……しれない、けれど。

 このことに関しては、美久は今でも自分の中で考えるときすらしどろもどろになってしまうのであった。
 認めたらなにかが変わってしまう。そんな予感に。
 留依であったら「変わらなければ進めないんだよ」と言ってくれるのかもしれないけれど、ひとまずはまだその未発酵の気持ちは美久の心の中にだけあるのだった。
 その言葉は実際に言われてしまったけれど。
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