水曜日は図書室で
金色のプレゼント
「あー、よく歩いたな」
 楽しい時間はあっという間。街中はもう夕暮れだ。
 快が駅のほうへ向かいながら、うーん、と伸びをしていった。
「うん、いっぱい遊んだね」
 美久も答える。
 あれからゲームセンターのほかにもいくつかのお店に入った。
 雑貨屋さんも見たし、クレープなんかも食べた。
 美久は街中のお店でクレープを食べるなんて初めてだった。
 席はなくて、近くのベンチで食べたのだけど、今まで食べたどのクレープよりおいしかった、と思う。ただのチョコレートソースのかかったシンプルなクレープだったのに。
「美久、足、痛くないか?」
 快が聞いてくれて、美久の胸がほわっとあたたかくなった。やっぱり気にしてくれていたのだ。
「うん、大丈夫だよ」
 答えてから気付いた。これだけでは。
「ありがとう」
 美久のお礼には、ふわっと笑われた。「どういたしまして」と言われる。
 もう駅に着いてしまう。駅からの電車は別だ。ちょっと残念なような。
 今日はとても楽しかったから。また快とデートができたらいいな、と思う。
 そしてそれは幸運にも快も同じように思ってくれたようだったのだ。
「また遊びに行こうな」
 美久はもちろん、満面の笑みで頷いた。
「うん!」
< 89 / 120 >

この作品をシェア

pagetop