うるせえ、玉の輿。
ペナルティ


綺麗だという彼が、うるせえと思った。
その唇を汚したいと思った。

『麻琴ちゃんはお姫さまみたいに可愛いわ』

脳裏に浮かぶのは、初対面から私のことを嫌がらなかった業平の顔。

『お姫様はね、素敵な王子様が現れて、幸せにしてくれるのよ』

業平は、それを玉の輿だと言った。
私の玉の輿は、雨がしのげる家があることぐらいだったけど。

業平は、最初は私を着飾って楽しんでいたけど、低くなっていく声や伸びていく身長、しっかりした肩と成長していくにつれてちょっとだけ寂しそうだった。

私はお人形でもいい。業平が私が玉の輿に乗るのを喜んでくれるならそれでもいいかなって思っていた。

石油王の100番目の嫁になり、夜伽はしないが必要最低限の生活費がもらえるとかね。

ただ――。

玉の輿の最低ラインに、この人は乗らないと思うんだけど。

奨学金の返済は事実借金みたいなもの。
まだ未成年の弟たちがいる。病気がちな母親もいる。

この人は、玉の輿の相手じゃないし、業平の好きな人。

知ってるのに、汚したのは誰?


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