うるせえ、玉の輿。
一、ドロップキック

 小規模でアットホームな会社に就職した。造園の設計、リフォームの会社で私は主に依頼者の要望をまとめて書類にして提出したり、会議の前にお茶の準備。
 田舎なので初任給は18万だった。その額に私は腰を抜かしそうになった。

 ギャンブル依存症の父親のせいで生活保護で生活していたあの日々。学校で必要な教科書やノート、鉛筆などは生活保護費に経費として申請すれば上乗せしてお金がもらえる。
 その時に必要最低限の経費が出た。一万円はあったと思う。
 思うも何も、平然と父親に奪われたので中身を見ていない。
 抵抗して殴り返したけど、女の私では取り返せなかった。
 悔しくて、悔しくて、業平が色々お下がりをくれたのが悔しかった。


あの時の額の18倍もお金が手に入ったのだ。
12万は貯金して6万円で生活した。最初は贅沢にびくびくしたが慣れればおやつが食べたくなる始末。

一年で120万以上溜まった。私はその貯金額に涙が出たのを覚えている。
月六万で生活したら二年近くは飢えに苦しむことはないのだから。

今は順調に貯金も増やせたし、もう少し贅沢に使っている。
けれど、あの学校に必要な道具を経費として申請したり、業平にお下がりをもらった記憶は現在のお金では消せないから厄介だ。


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