彼女は実は男で溺愛で
パソコンを落とし「お疲れ様です」と席を立つ。
今日は悠里さんとの約束はない。
久しぶりに、里穂さんのところに顔を出そうか。
そう思い立ち、隣のビルに足を向けた。
地下に降りるのは久しぶりだ。
ボディメイク室に向かい、ドアに手をかけて固まる。
開いていない。
そうか。
約束していたから、里穂さんにも会えていたのだ。
会いに行けば、いつでも会えると思っていた自分の考えの甘さに、肩を落とす。
たまには早く帰ろう。
そう考え直し、エレベーターの方に歩き出したところで携帯が振動した。
画面には『染谷悠里:もう帰った?』と表示された。