彼女は実は男で溺愛で
お昼になると、柚羽と共に村岡さんの後を一定の距離を保ちつつ尾行する。
会議室に入ったのを確認して、ノックしたところで返事のない扉に、律儀にノックをしてから入った。
既に会議机でお弁当を広げる村岡さんは、私たちを一瞥し、ため息を吐く。
「あなたたちほど、しつこい人も珍しいわよね」
「はい。粘り強さを売りにしてますから!」
柚羽が元気に答えても、村岡さんは冷たい眼差しのまま。
それでも彼女が席を立つことはなかった。
お弁当を食べながら、たわいもない話をして、私と柚羽は笑い合う。
時に村岡さんの冷めたツッコミが入り、私たち2人はその度に「村岡さん、冷たい」だの、「さすが村岡さん的確!」だとか言って盛り上がった。