彼女は実は男で溺愛で
ゆっくりと

 溜まっていた洗濯物を片付け、部屋の掃除を済ませる。
 平日は簡単に済ませてしまう料理でもしようかと考えたところで、メールを送った。

 相手は染谷さん。

『いつもご馳走してもらってばかりなので、今日は私のアパートにいらっしゃいませんか? 大した物は作れませんけれど』

 メールを送るとすぐに着信があり、電話に出た。

「おはよ。史ちゃん」

「おはよう、ございます」

 電話を通すとすごく男性的に聞こえる声が、ダイレクトに耳に届いて顔が熱くなる。

「俺って、まだ男だと思われていない?」

「へ」

 間抜けな声が漏れると、電話の向こう側で苦笑する声が聞こえる。

「アパートに呼ばれたら、キスだけで済ませられない気がする」

 薄暗い、埃っぽい地下の資料室。
 触れるだけの優しいキスの感触を思い出しそうになって、ますます顔が熱くなる。
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