初恋してます。
お姉ちゃんが蓮くんの背中にそっと手を当てた。



「自分を責めないで、蓮。……泣いていいんだよ。今なら、皆打ち上がる花火を見ていて、誰も蓮のことを見てないからさ。ずっと……、辛かったんだよね」



星空を見上げたお姉ちゃんが気遣うように蓮くんにそっと声を掛けた。



打ち上がる花火の明りが一瞬蓮くんの顔を明るく照らし出し、頬に涙が伝っている様子をはっきりと私は目にした。



「俺、……やっと話せたんだ……。何年かかったんだろうな……」



そう言い終えた蓮くんの表情は少し安堵に満ちた表情に感じたのは私だけだったのだろうか。



ただカメラが趣味で好きなだけじゃなかったんだね。



きっと、今でも蓮くんが良く写真を撮ったりしているのは大切な瞬間の思い出を1枚でも多く残そうとしていたからなんだね。



「つい、俺が彩歌に甘いのは──。妹も俺に良く甘えてくるところがあったからかなあって。

……まぁ、妹の方がもう少しおとなしかったけれどな……──」って私の顔の方を見て蓮くんが少しクスッと笑った。



私はおてんばで、いつもスミマセン……。



「少し、おとなしくなろうかっ、……私?」



「いいよ。お前は、いつも通りのお前のままでいて良いんだよ」



「うん──」



失った大切な家族の存在、どれだけ辛いものだっただろうか。



きっと、それは同じような思いをした人にしか分からないはず。



遠くを見る蓮くんの瞳は、涙で潤んでいたけれど深い悲しみと向き合おうとしている強い意志を感じられた。

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