雨の滴と恋の雫とエトセトラ
第四章 分かり合えたなら

 一度吹っ切れてから、拓登の前ではおどおどせずに、本来の自分をさらけ出せるようになったと思う、気分だけは。

 開き直るというのか、自分の中で奮起した、こうでありたいと思う気持ちは、私にとったらやっぱり曲げられない矜持なんだと思う。

 拓登はやはりかっこいいけど、そこばかり重点的に見ても意味がないし、私はそんなことに惑わされて自分を見失いたくない。

 それよりも、話や趣味が合う方が大事に思え、そう考えれば私としては興味のある事を一緒に話せる方がもっと魅力的に見えてくる。

 拓登は私からの情報を楽しんで聞くという聞き上手でもあり、拓登からの質問も思わぬところで、ハッとさせられることがあったりと、それなりにお互い話は合う……と思っておこう。

 拓登は色々な事を真面目に分析するように見る癖があり、特に新しいものに出会うととても興味を持つ。

 それが自動販売機の缶ジュースであったり、その辺にいる犬や猫であったり、時には空を飛ぶ鳥など、目に付くものはなんでも気づいてじっと見ていた。

 流行に疎いと自分でも言っていたが、確かに流行ってる商品や曲などは知らなさそうで、目に付いたり耳に音が入ってきたりすると感心して興味を示していた。

 そういう感じ方が、私にはまた新鮮味があり、知らないから素直に質問されると面白く感じたりする。

 拓登は今までどんな風に過ごしてきたのだろうと、過去の拓登に興味がそそがれた。

 自分の事を見て欲しいと主張しつつ、まだ自分の事をあまり言わないように思うのは気のせいだろうか。

 まだそれだけの時間を一緒に過ごしてないのもあるだろうけど、これから徐々にお互いを知って行くのかもしれない。

 正直になれば、きっかけはなんであれ、私はもうすでに拓登が好きだと言えるところにいる。

 この感覚は、初恋も含め、今まで気に入った男の子に好意を寄せてきたものと似ていた。

 過去にその気持ちが続かなかったのは離れたり、自分から行動したりせずに、自然消滅するからだった。

 だから拓登と長くこうやって一緒にいたら、きっと私はもっと拓登の事が好きになって行く。

 それが本当の恋として、私は拓登が好きって告白したくなるんだと思う。

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