雨の滴と恋の雫とエトセトラ
「とてもいい人そうだよね。優しさがにじみ出てた」

「みのりって、大人しいくせに見るところはしっかりと見てるよね」

 かの子が口を出した。

「みのりは一番冷静に物事を見て、観察するタイプだからな。で、みのりの目からみてヒロヤさんは他にどんな風に映った?」

 千佳の方から質問を振っていた。

「うーん、そうだね。とても世話好きで、人の事を考えるタイプって感じがした。もちろん優しくて素敵な人なんだけど、でもどこか、影があったかも。メガネのせいかな」

「さすが、みのり、良く見てるわ。ヒロヤさんってお人よしで、すぐに損しちゃうタイプなんだけど、損得なしに誰にでも優しいところが素敵なんだ」

「あんたさ、もしかしてヒロヤさんのこと好きなの?」

 やっとかの子が突っ込んでくれた。

 私もそれが聞きたかった。

「まあね。でも叶わない恋なんだ」

 回りくどく考えてた私の感覚を無視するように、あっさりと千佳が認めた。

「ヒロヤさんって、大人だもんね。あれは高校生を相手にしないタイプだわ。でも千佳に好きな人がいたなんて知らなかったわ。あんたが一番恋には程遠いタイプって気がした」

「かの子は、デリカシーがないよ。千佳だって女の子なんだから、恋くらいするって。それを隠さず潔く認めているだけ、やっぱり気持ちいい。誰かさんと違って」

 みのりがちらりと私を見ると、それに合わせるようにみんなの視線がこっちに向いた。

「真由、あんたは結局どうしたいんだ? やっぱり山之内君のこと好きなんでしょ」

 恋しているとはっきり認めた千佳に聞かれると、どう答えていいのかわからない。

「そろそろ、はっきりと自分の気持ちを決めた方がいいぞ。どっちつかずだと、山之内君に憧れてる女の子の反感買うぞ」

「やだ、かの子やめてよ、脅すのは。山之内君もただ友達として私と話してるだけのように思うし、私も変な期待しちゃったら、あとで辛い」

「あっ、真由、やっぱり恋の駆け引きでどっちに転ぶか慎重になってるんだね」

 みのりは悪気なく、びしっと要点をついてくる。

 それが一番言われたら恥ずかしいことだと言うのに。

 相手の様子を見て、どうしようか迷ってるなんて、あざといし、自惚れてるってみえみえ。

「みんないじめないでよ。私もこんなこと初めてで、すごく混乱してるしさ。だって、あんなにかっこいい人がいきなり近づいてきてくるんだよ。戸惑わない方がおかしくない?」

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