雨の滴と恋の雫とエトセトラ
第二章 よくわからないのに

「山之内君!」

 思わずびっくりして立ち止まってしまった。

「おかえり」

 さりげなく笑顔で言われると、条件反射的に「ただいま」と口をついてしまう。

 でもその後、私は笑う余裕がなくてただ戸惑って山之内君をじっと見てしまった。

 周りは改札口を出てきた人が丁度各々の方向へと散っていき、駅前は人通りがまばらになっていた。

 山之内君は邪魔にならないと思ったのか、自転車を押して私に近づいてくる。

 自転車のティキティキティキとしたタイヤの回る小刻みな音が耳に届いた。

 自転車ですら、クロスバイクでスマートなかっこよさがあり、そこに程よいゆるめのチノパンに英語のロゴTシャツを着てその上にデニムシャツを羽織っている私服姿が、アメリカンカジュアルを着こなしているようでサマになっていた。

 胸を張って背筋が伸びている姿勢も自信が漲って頼もしい。

 その辺の高校一年生と比べてやはり大人っぽく見えるのは、精悍な風貌だからだろうか。

 つい見とれて垂涎してしまいそうで、誤魔化すように質問を振ってみた。

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