一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る
プロローグ
 
 アンティークの調度品が飾られた豪勢な部屋の真ん中で、私は立ち尽くした。金縛りにあったみたいに、身動きが取れない。

 目の前で悠然と脚を組むその人は、おとぎ話に出てくる王様のようだ。いや、王様というよりは大魔王様といったほうが近いかもしれない。

 秘色の布が張られた重厚な椅子に腰をおろし、肘掛をつかって頬杖をつき、整った顔をまっすぐこちらに向けて、射抜くように私を見ている。

 目に映るものすべてを呑み込むような瞳は深い茶色で、その佇まいは威圧感に満ちているうえにどこか気品がある。

 少しでも気を緩めたら、即座に魂を吸い取られそうだと思った。もちろん、そんなことはありえない。それなのに、足の震えがおさまらない。

 住む世界が違いすぎる相手と、どう渡り合えばいいのか。

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