校内一モテる地味子ちゃんの裏の顔
「姫莉ちゃんが付き合ってくれるって、言うなら」
「えっ…」
「バレたら大変だよね、お金稼げなくなっちゃう。
特待枠、取られちゃうかもしれないしね?」


悪魔、だと思う。
自分でも思うんだから、姫莉ちゃんは絶対それ以上のことを思ってると思うよ。


だって、ほら。この複雑そうな、歪んだ顔。
……そーゆー顔、俺は好きじゃないけどね。


「どーする?俺と付き合っとく?
まぁ、姫莉ちゃんにはそれくらいしか選択肢なさそうだけどね?」
「…そーゆーの、ズルくない?」
「まぁ、それくらいしてでも姫莉ちゃんがいいってことだね?」
「どーせすぐ、捨てるくせに」


むすっと、拗ねた顔。可愛い。


「どーする?」


姫莉ちゃんの手をぎゅっと握って顔を近づける。
唇が触れるまで、3センチ。


「……」


姫莉ちゃんは視線を落とした後、ゆっくり目を閉じた。
諦めて、くれたらしい。


チュッと触れるだけのキス。
久々の感覚。


「ありがとね、姫莉ちゃん」
「……嫌い」


むうっと口を膨らませて、控え室を出て行った。
シフト、いっつも入れ替わりだったんだ。
そーゆーことだ。
だから今まで気づかなかったんだね。
8月に入ったら、多分、もっと被るんだろうな〜って。


「ラッキー」


夏休み、楽しくなりそう。
< 28 / 94 >

この作品をシェア

pagetop