負け犬の傷に、キス


反省する俺を横目に、柏は生クリーム数グラム残すことなく、ショートケーキを食べきった。


俺だってケーキ食べたい……。

糖分は頭にいいらしいし。



「お兄さんはダサくありませんよ」



落ちこむ俺を励ましてくれたのは、仲間ではなく黒髪の女の子のほう。


小学生になぐさめられてる、俺……。

あれ? なんだろう。目に光るものが……。




「ごあいさつおくれました。勝手におじゃましてすみません」


「あ、い、いえ! ご丁寧にどうも」


「右足の調子はどうですか? まだ痛みますか?」


「大丈夫! 大丈夫です! もうほとんど完治してます!」




立ち上がって礼儀正しく挨拶され、つられて俺も堅苦しい口調で返してしまう。




「右足のケガも、まさかこの子を助けた拍子にやっちゃったなんてね」


「かっこわりー」


「それも聞いたのか!?」


「「うん、全部」」




昨日のことだけじゃなくて、本当に全部かよ!

だったらけなすなよ! もっと……こう……褒めるとか、心配するとかさあ!



「あ、あの……よ、よかったら! お兄さんもコレどうぞ!」



ほら! 小学生に気を遣わせちゃってるだろ!



女の子はテーブルに置いていた白い箱を示した。

箱の中にはチョコレートケーキとチーズケーキが入っていた。



柏が食べてたショートケーキは、この子が持ってきてくれたのか。あとで俺もおいしくいただこう。


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