【BL】近くて遠い、遠くて近い。






「お疲れ」





疲れているのか、
踵をいつもより大きな音で引きずり、
気だるそうに笑って近づいてきたナオくん。


相変わらず引きつった笑みしか出ない自分が嫌だ。





「お、お疲れ、優勝おめでとう」


「あざっす。青組も2位やん、おめでと」


「うん、ありがと…」





若干の沈黙が流れる。

目の前で立ち止まったナオくんの顔を
オレはしっかりと見ることができないでいた。





「あのさ、」





いつにない重たい声で口を開いた彼に、
内心恐怖を覚えてしまった。
何かして嫌われてしまったんじゃないかという恐怖だ。





「…な、に?」


「あの子とは、…なんか、アレ?」


「…え??」


「女子と話してたやん、さっき」





ああ、やっぱ見られとったんや。

そんなに嫌なことしてしもうたかな。

ひょっとして、中原さんのこと好きやったとか…。




それとも、オレへのヤキモチ…とか…。

さすがにないか。






「中原さんね…なんにも、関係ない。
ただ…クラスメイトってだけ…」


「そっか」


「ごめん…」


「なんで?」


「だって…」






オレが口ごもると、
ナオくんは軽く吹き出して
オレに謝ってきた。






「ごめんな、なんかww」


「え…?」


「いや、あの子がお前と付き合ってへんなら別になんもないわww」


「そ、そう…」






なんなん…?
やきもち…?

オレ、期待してええのん?
どういう意味?

中原さんに気があるん?
どっちなん?






「…あの子ちっちゃくて可愛いし、
ちょっと気になっててん、ごめんなほんまに」







あぁ、そっか。

やっぱそっちか。




そら、そうやわな。






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