BLUE

門出

「ごめんね、修。明日の引越し手伝いにいけなくなったの。」

引越しの日の前日、急に母親が言った。
親父が世話になっていた人が、急に他界したそうだ。

「別にいいよ。家具もって行くわけじゃないんだし。」

「でも荷物重いでしょう?それでね、着いたらここに電話してみて?」

母親からもらったメモには電話番号が書いてあった。

「誰のケータイ?」

「おとなりの美香ちゃん覚えてる?昨日隣のおばさんに、修が上京するって話してたらね、なんと美香ちゃんあんたと同じ大学なんだって。」

「あ、そうなんだ。へぇ。」

僕は驚きはしたが特に興味を持たなかった。
美香さんは僕の中では「女の子」というカテゴリーに入っていないからだ。
逆に「女」にしか興味を持たなくなった僕自身に少しだけ失望した。

「修が同じ大学に行くって言ったら、美香ちゃんすごく喜んでね。引越しのお手伝いに来てくれるんだって。心強いわ。」

「それは母さんにとって心強いだけだろ。俺は別に必要ないよ。」

「そんなこと言わないで?あんなに仲良しだったじゃない。」

「ガキのころの話だろ。」

確かに僕は美香さんと一緒にいることで充実した子供時代を送ったかもしれない。
でも新しい生活にまで過去を持っていくことになると思うと、面倒くさい気もした。
新しい生活になるなら、すべてを新しくしたいと思う。

僕は、仕方なくメモを受け取った。


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