リベンジ学園
自分の言いたいことを言った虎治の怒りが少し収まり、辰雄の胸ぐらをつかんでいた右手の力を弱めると、辰雄は苦しそうに咳をして、その場でしばらく黙り込んだ。



虎治はそれでもイライラが収まらず、「クソッ!」と一言怒鳴り声を上げると、紗栄子が飛び降り自殺をした西条学園中学の校舎を見上げた。



原島虎治は家庭でも学校でも街中でも、いつも不満を抱えていた。



それはこの世の中に正しい答えが溢れ過ぎているからだ



人は皆、24時間ネットと繋がっていて、胸の高さで人差し指を左から右へとスライドさせれば、自分の目の前にマイページの画面が現れる。



そのマイページでAIに質問をすれば、いつでも正しい答えが出てきて、その答えにさえ従っていれば、人は安泰に生きられると言われている。



でも、虎治はこのAIで導き出される正しい答えが嫌いだった。



AIが導き出した正しさは、誰に向けての正しさなのか?。



AIに自分の判断を委ねたときから、人は人じゃなくなるんじゃないか?



百人が百人とも同じ答えの通りに行動するのが正しいなら、自分が生きる意味はどこにあるのか?



特権階級に属している虎治の父は、AIの判断に頼らない人だった。



「正解が溢れている世の中で、正解になど意味はない」



虎治の父はそう言って、AIの判断をいつも無視して生きていた。



きっとそんな虎治の父の生き方が、国民の上位2パーセントに入る生き方なのだと、虎治は漠然と思っていた。
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