日日爽恋
 まだ肌寒さが残る日、勉強疲れをたずさえながら、学校近くの公園を通りかかった。

 綺麗に咲いた桜が風に花弁をのせて舞っていた。とても幻想的な雰囲気を感じ、ふらふらと近づいていった。

 桜の傍のベンチに近づいたとき、先客があることに気がついた。

 桜のような白い髪を持つ、綺麗な男性が座っていた。まるで桜の妖精のようだ。

 あまりにも美しい光景に、見惚れて立ち尽くしてしまっていた。

「綺麗…」

 こちらの呟きに反応して、妖精がこちらを向いた。

「こんにちは」

 澄みきった声に、私は言葉が出なかった。

(すっごいイケメン……)

「綺麗だよね、桜」

 イケメンは無言なわたしのことは気に留めず、桜を見ながら言葉を続ける。

「座ったら?」

 ぽんぽんと、ベンチをたたく。

「は、はい」

 やっと声を出したわたしは、イケメン妖精の隣に、ぎこちなく座った。

「疲れてるみたい。ダイジョーぶ?」

 こちらを覗き込みながら、心配そうにしている。

「べ、勉強が大変で…」

 しどろもどろになりながらも、なんとか答える。

「そっか、これ、あげる」

 彼は何かをわたしに渡してきたので、とっさに受け取った。

「栄養ドリンク…」

「それ飲んでさ、元気だしなよ。無理しないでね」

 そう言って、すらりと綺麗な手を振りながら立ち去っていった。

 爽やかな風が吹く中、本当に絵になる刹那の時間。

 これが彼との出会いだった。
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